「嫌われた監督」落合博満は中日をどう変えたのか
表紙には
なぜ 語らないのか。
なぜ 俯いて歩くのか。
なぜ いつも独りなのか。
そしてなぜ 嫌われるのか――。
とある。
私にはさらに疑問がある。
なぜ、退任して10年も経つのにこんなにも落合は話題になるのか。
野球を見始めたこと自体も遅く選手落合も見ていない、ドラゴンズファンになったのも監督落合が終わってから(40代では少数派かもしれない)。落合とは一体何なのか?それを知りたくて手に取った。一晩で読んでしまった。
エピソードとしては、後追いで知っているものもあったし、全く知らないものもあった。夫から聞いたり、ネットで見たり、ラジオで聴いたり。自分の中で出所が様々だった落合情報が、一人の著者の目を通して語られたことで、ぐっとリアルに迫ってきた。
これは、ノンフィクションなのか。ドラマチックすぎやしないか。
特に、第一章・川崎は、開幕投手で川崎、オールスターのネットのファン投票ダントツ一位→辞退、があったのは知っていたが、内面にまでここまで迫っているものを読んだことがなかった。リアルタイムを知らないのに泣けてきた。
なぜ、なぜ俺なんだ……?
その答え。ファン投票後の、川崎の心。章につけられたスポットライトというタイトル。あまりにも辻褄が合い過ぎて、小説なんじゃないか?と思うくらい。だが、本当にあったことなのだ。監督落合の見えていたものの鋭さ、確かさ、ブレなさに驚く。
最初の章でこれだから、一気に引き込まれた。12人がキーマンとして挙げられている。そして著者自身も落合によって変わっていく姿が見える。
落合博満は著者、鈴木氏をどう変えたのか…
監督就任の情報が出てきた頃は「いわば伝書鳩だった」という筆者が、落合に惹き付けられ「もし、このチームが優勝したら……監督の原稿、僕が書いてもいいですか?」と、年長の記者に驚かれながらも言い出し。
「お前、ひとりか?」と問いかけられ、意味ありげな言葉を投げかけられ、あれはなんだったのか?と考え続ける。周りに惑わされず、落合と向き合っていく姿は、出てくる選手たちに重なるように思う。
この本を読み終わって夫に「落合って本当に嫌われてたの?」と尋ねてしまった。
そりゃ、これだけ貫けば嫌う人もいるだろうし、実際近くにいたら苦しいだろう。でも魅力的に思えたのだ。今のドラゴンズには足りない、大人でプロフェッショナルな生き様。その中で垣間見える、骨折した森野へ向けた表情や、お守りを紛失した時の人間くささ。
こんな監督は、二度と現れないんだろうな、とも。だから10年経ってもいつまでも話題にするんだろうと。
この頃のドラゴンズを見ていたかった。でも叶わない。それに、今まで見てきたドラゴンズだって好きなのだ。だから、この本に出てきた人物たちがドラゴンズをどう変えていくのかを、見ていこう。